シナプスのすきま

若手舞台俳優オタクが語りたいだけ語るところ

Building303 舞台「水の泡」感想(レポ)

劇団Patch 1期生の三好くん自主企画「Building」の第3回公演、舞台「水の泡」を、8日と千秋楽に観てきたのでレポ。
一言で言うと、ドラマを見てるみたいで面白かった!

Building303_水の泡


※以下ぶっちゃけたこと好き勝手書いてます
※めっちゃ長いから見出しつけたので適当に読み飛ばしてください

手売り

「水の泡」はまだ稽古が始まる前、1ヶ月をかけて三好くんが毎日手売りしていた。
私がBuildingを観に行こうと思ったのは、他でもないこの手売り活動のお陰だ。
たまたま職場近くの駅に三好くんが来るって言うからちょっと話しに行ったのが最初。チケットをまだ買うか迷ってる段階なのに三好くんの対応はすごく良くて、Patchに対して抱いていたモヤモヤなんかも全部訊ねたらスッキリする答えを返してくれた。彼を近くで見るのは初めてだったんだけど写真や舞台上で観るよりも目がぱっちりしてて超かわいくて、かわいいかわいいって何回も言ったら「俺かわいいキャラちゃうねん」って照れるのがまたかわいくて、完全に好きになってしまった。Patchは沼だ。
その後も手売りに足を運び、三好くんに席を選んでもらってチケットを買った。

このとき、このままだと厳しいんじゃ……?という予感はあった。だってチケットを買うつもりがないか、もう買える分は買ってしまったようなファンへの対応に時間をかけすぎてた。あれじゃ疲れただろうし、チケットは一向に捌けない。既存のファンだけじゃなくてもっと積極的にチラシ配ったりすればいいのにって思ってた。

クラウドファンディング

そんな頃に、クラウドファンディングが始まった。案の定というかなんというか、チケットもまあまあ残ってる。これ目標額満たされても席埋まらなきゃ厳しいよね、と私の周りもざわめいていた。
クラウドファンディングのwebページを見ていると、彼女の死のことまで持ち出すのはどうなの?悲壮感出しすぎじゃない?「東京から舞台美術を運んできます」「海辺の劇場でやります」なにそれアート?なんの意味あるの?そんなことするならチケット代もっと高くしとけば良かったんじゃない?でも4,000円超えてたら私2回も観に行かなかったなあ、ていうか台本上がるの遅すぎない?
みたいな会話を、周りと何度も交わした。何も知らないくせにって感じだけど(笑)
こんなに真剣に心配させた時点でもう三好くんの勝ちみたいなもんだな、って今なら思う(笑)
公演が近づくにつれ色んな演劇系メディアに取り上げられて、これ宣伝費かかるんじゃ?とか、色んな大学の演劇サークルの子たちに会いに行ってて、この全員を無料招待したんじゃ?とか心配にはなったけど(笑)、席は下手な2.5次元舞台よりも埋まった。いや、昨今本当にガラガラの2.5あるから…それよりずっと良い。
しかも、千秋楽は完売の上に当日券で通路に座布団を敷いた席も作られた。まさに超満員。キャストの福谷さんが稽古期間中に、「今埋まってなくても、大丈夫だと思うんですけどね」と言ってらしたのがその通りになった。

舞台セット

会場はアクセスの悪いところにあったけど、廃墟っぽい雰囲気が好みだった。
で、劇場の中に入ってびっくり。なんか……段差が物凄く急!ってそれもだけど、何より凄かったのは舞台上に家があったこと。部屋ってレベルじゃなくて家。キッチンと冷蔵庫と電子レンジと、テーブルとバラバラの形をした4脚の椅子と、テレビ台の上の液晶テレビと、タンスの上に雑多に置かれたなんやかんやと、家の外につっかけが2足。
高さのあるセットで、2階部分にはベンチと街灯があった。
確かにこれだけのことをやりたかったら、東京から運んでこなきゃダメかもな……って納得した。
窓の外には、物干し竿と本物の車があった。こんなの初めて見た……!ガソリンを抜いて搬入するって前々から聞いていたけど、いざ目の当たりにすると思わず二度見した(笑)

感想

いきなり三好くん演じる豊がタオル1枚腰に巻いてなぜかマスクをした姿で現れて笑った。
豊は本当にどうしようもないクズで、自分しか見えていないような奴で、すぐに大きな声を出す。個人的には、「可哀想な人だな」と思いながら見ていた。
私事になるけど、つい最近父と喧嘩した。そのときの父の怒鳴り方も言ってる内容も、まさに豊みたいな感じだったのを思い出した。
豊みたいに常時あんな感じなのはそうそういないけど(笑)、スイッチが入ったらああなる人っていうのはよくいると思う。普通にそのまま「残り物やだ~!何か作って~><」って言えばまだかわいげがあるのに、「昨日の残りの筑前煮なんてそれはもはや昨日と同じじゃないか云々」とそれっぽい(と自分だけは思ってる)理屈を並べて、「俺は決して子どもっぽい駄々をこねているわけではありませんよ」感を出そうとする。そして豊は、完全に失敗してる。みんな「子どもっぽい駄々こねてんな~」って気づいてるよ!笑
無理やり後付けの破綻した理屈をこねているので、きっと豊自身「何言ってんだろ」って思うことはあるだろうけど、周りが何も反論しないから「まあこれで押し切れるだろう!」って変に自信持っちゃってる。可哀想だ…。
そんな豊の滅茶苦茶な発言、思いがけず炎上しちゃったTwitterアカウントみたいで面白くて「何言ってんだこいつ」ってクスクス笑ってしまった。見てて辛かった人もいただろうけど、ごめん、私は面白かった。「稼がない電通」とかさ、もう絶対そうでしょ、ネット民でしょ(笑)

三好くんのクズ役はハブレンでも見たけど、本当に上手い。こういう役絶対難しいと思うんだけど、低くてよく響く声も合ってるし(たぶん発声の仕方が上手い)、悪いやつなのに体型が細いから良い意味で「小者感」が出る。
あと稽古期間中のエピソードで、三好くんが生島くんを理不尽に怒っちゃった話があったけど、そういうとこめちゃくちゃ豊っぽいよね!本人は不本意だろうけど、終演後にお話させてもらったキャストさんもタカイさんもそう言ってた(笑)
生島くんも、そのとき「ええー?違くないすか?」とか思ったらしいので、うん、めっちゃ優だわ。


この話、「誰にも共感できない」という感想が多かったけど、本当にそうなのかな?
私は優に一番共感した。私も職場であんな感じ。まあ、仕事はちゃんとするけど(笑)偉い人がちょっとよくわかんないことを怒鳴り散らすので、「まーた言ってるよ」と呆れながら冷たい感じに間違いを指摘する。やってるわ、私。
優は空気を読めないと言うけど、そもそも個性を育てるのが平成の教育だったので、「空気を読む」のはちょっと時代遅れだ。(「相手を思いやる」というのなら分かるけどw)
それに、自分の意見は陰口を叩くのではなくはっきりと相手に伝えるべきだと教わった。そういう時代だった。
優は豊が何か変なことを言うたびに「やれやれ、ほんっとこの人クズだな」と思ってる感じがした。世の中を舐めきってる自分自身のことは棚に上げてるのが痛いところだけど、めっちゃ共感した。
それと何気に豊と祐次のガチ喧嘩のシーンで、咄嗟に咲を庇ったり、最後は止めに入ったりしてて、やるときはやるんじゃん!と思った(笑)
でも、仕事は真面目にやろうな。

真実には全然共感できなかったけど、何を思っているかは伝わった。
豊に対してグサリと効く言葉を言ってやりたいけど、相手にするのは馬鹿らしいし疲れるから、ものすんごく弱弱しく控えめに言うことにしたって感じかな。豊の大声にビクビクしてて、声は消え入りそうに震えてるのに、言葉はきつい。
「それくらい自分で探したらどうなの」と言った“体温計の外側”が、終盤で真実のパーカーのフードから出てきたのは「あーあ」って感じだった。どう考えても明らかに相手の方が悪いなってことはよくあると思うけど、そんな時に限って自分にも少なからず落ち度があったことに気付くんだよね。あるある…。だからって相手の方が明らかに悪いことに変わりはないんだけど(笑)

Patchの吉本くん演じる祐次は、真実の浮気相手。一番常識人で、すごく人間味に溢れた人物だと思った。
吉本くんっていえばゆるーいお調子者みたいなイメージがあったけど、真実とのラブシーンがめっちゃ優しいイケメンでキュンとしたし、ちょっと切なそうな雰囲気が意外だった。
あと、豊とのガチの喧嘩のシーン。殴り合ったりこそしないけど、取っ組み合って机にぶつけたり床に倒れたり。そのときの表情が今まで見たことないくらい本気で怒っていて、吉本くんてこんな顔するんだ、って舌を巻いた。

脚本・演出のタカイさんは天才だな、と思った。
公演期間前に話が戻るけど、三好くんがかなり悲壮感出してたとき、私は「タカイさんがもっとしっかりしてくれたら…」などと思っていた。今思うと失礼すぎる(笑)タカイさんめちゃくちゃしっかりばっちり仕事してたわ。だって普通、こんな脚本書けない。
豊にしろ優にしろ、リアルな「あるある」を種にしつつも、それを何倍にも膨らませて一見すると非現実的な「そんな奴おらへんやろ」の領域にまで持って行くのが上手い。観る側は「そんな奴おらへんやろ」から「あ、これあるあるだな…」に気付いたとき、一気に見方が変わるのを楽しめる。本当に面白い作品だった。

それに、あんな演出、たとえ思いついても普通実現できない。
豊の浮気シーンは、確かに本物の車がなきゃ再現できないだろう。家の窓から見えるところで単に抱き合ったりするだけじゃないことやってるっていうのは、そりゃ車の中になるだろうし、シート倒したり車内灯付けたりはハリボテの車じゃできないことだ。でもそういう場合、普通だったら「じゃあ本物の車を使わずにどう表現するか」っていう話になるわけで、「じゃあ本物の車をどうやって使えるようにするか」っていう思考になる人いないでしょ、そんでそれ実現まで持って行けないでしょ…。すごい。この車の存在が、最後の「洗車雨」にも効いてきたなあ。
車すごいなあと思って観てたけど、終盤になってまさか本物の花火をするとは思わなかったし、本物の水が降りそそぐとは思っても見なかった。
本物の車、花火、雨、そして本物っぽい家のお陰で、舞台というよりドラマを見てるみたいだった。舞台に限界なんてないんだなぁ。

終演後三好くんがロビーにいたので話を聞いたら、「海の近くだから消防法が緩かったし、水はそのまま海へ流せた。だからこの会場にした」とのこと。
なんでこんなアクセス悪くて、キャパ大きくて、使用料高そうな会場でやることにしたの?海が近いからってだけじゃ納得いかないんだけど?とモヤモヤしていた疑問が、その言葉でスッキリした。それなら確かに、ここじゃなきゃ無理だった。めちゃくちゃ苦労する未来が目に見えててもそこに拘るっていうのが、すごく三好くんらしいなあ。


本物の雨が降り注ぐのを見て、賢太が嬉しそうに「豊、洗車雨だよ。やっぱり願いは叶うんだよ!」と言った。
豊は短冊に、「雨が降りますように」って願ったんだなあ。願いは叶うのかを確かめるために。
去年は、その前は、いったい何を願ったんだろう。「会社を辞めてIターンでどこかへ行きたい」も過去に願ったことの一つかな。でも、去年の願いはたぶん、叶わなかったんだろうなあ。それだけでやさぐれたわけじゃないだろうけど(笑)

――なんか、このあたりだけ急に抽象的になった。
舞台セットにごまかしがないこともあって、全体通して見ると何が起きているかがすごく分かりやすく、観る側にはっきり伝わりやすく構成されてたのに。豊の願い事をはっきり言葉で言わないし、豊の台詞も地震の夜あたりから自分に酔ってる感じ(笑)のクサい台詞が多くなったし。
それまでが易しかったぶん、急に色々と察しなきゃいけなくなって戸惑ったのはある。2回目観たら慣れたからまあいいんだけど(笑)


家の外の車に降り注ぐ洗車雨、びしょ濡れの豊を見ながら、彼も大きく変わったわけではないけど、これからはそこそこ穏やかに過ごすんだろうなあ。そんなふうに思って、これで「水の泡」のお話は終わりだな、と思ったらまだ続いててびっくりした。
しかもまた元通りの日常。一番最初のシーンを思い出す、仕事の時間中にふざけた遊びを始める山本さん、賢太、プラス優(笑)
そこに現れた豊はなんと最初と全然変わらないクズい感じで「そう来たか!!!」って思った。もしかして、ゲームで言うとノーマルエンドなんじゃないか?可もなく不可もない現状維持エンド、話の全てが「水の泡」になってふりだしに戻ったんじゃ?パッと見そう思えた。
でも最後の真美の「いつか見つかるわよ」という台詞を聞いて、分かった。これは、確かに何かへ続く終わりだ。
いつか、と言われた豊は、前までのようによくわからないことを怒鳴ったりはしなかった。成長すると言ったのにまた同じことを繰り返そうとしてる自分に気付いたのか、予想外の答えが返って来て窮したのか……とにかく黙ってしまった。そのとき山本さんが微笑んでいるのを見て、これは決して何も変わってないわけじゃない、というのを確信した。

ほとんどふりだしに戻ったかのような日常だけど、何かが変わっていて、確かに何かへ続いていく。そんな終わりだった。

Building H

三好くんとタカイさんが声をかけて集まった同世代のバリスタとかパフォーマーとかアーティストとかその他色々な方々が、劇場ロビーでドリンクやフードを販売したりショーやったり!という企画。
お祭りみたいでめちゃくちゃ楽しかった!
あまりチケットたくさん買えなかった分、ここで色々食べて飲みました(笑)

千秋楽の日にいただいたコーヒースカッシュとランチプレート♡
f:id:sato080:20170710225645j:plain
f:id:sato080:20170710225641j:plain

あと、水の泡オリジナルサワーとミニおつまみセットもいただいた!
どれも美味しかった~!

千秋楽はフリースタイルバスケとかマジックのショーもあって、ライブペイントも完成してたし、仕事を休んでまで観に行った甲斐があった。本当に楽しかった。
またこういうのやって欲しい、通うわ(笑)



三好くん、タカイさん、キャストの皆さん、スタッフの皆さん、本当にお疲れさまでした。楽しませてくださってありがとうございました!