シナプスのすきま

若手舞台俳優オタクが語りたいだけ語るところ

推しのキャスト変更を半年で受け入れられた話

※忍ミュ第7弾のネタバレあり

2.5次元舞台が好きな人なら誰しも「○○さんの演じる△△が好き」というのがあると思う。
でもその舞台が何回も何年も続くうち、○○さんはいつか別の俳優さんに交代してしまう。それは次かもしれないし、そのまた次かもしれないし、ひょっとしたらずっと変更はないのかもしれない。推しのキャスト変更は、2.5次元舞台が好きな人にいつか必ず訪れる試練だと思う。

半年前はうだうだ悩んだり拗ねたり落ち込んだりしたキャスト変更を、意外と一瞬で乗り越えた話をする。



私の推しは荒牧慶彦さん。出演作はテニミュ、忍ミュ、Kステ、薄ミュなど。5月には刀ステにも出演が決まっている、2.5次元俳優だ。
私が彼を知ったのは忍ミュ第5弾初演を観たとき。原作の忍たまでは別のキャラが一番好きだけど、そのキャラそっちのけで、なぜか彼の演じる仙蔵から目が離せなかったのを覚えている。まさに「荒牧さんの演じる仙蔵が好き」で、続く第5弾再演と第6弾初演の観劇中はまさにアイドルの推しカメラのように、仙蔵だけを凝視した。
そこにあの試練が襲ってきた。弾6弾再演で、キャストが変更になったのだ。新しい仙蔵は鐘ヶ江洸さん。顔はかわいい、というのが第一印象だった。意外と拒絶感はなかった。これはあっさり受け入れられるかも、と思ったが甘かった。

第6弾再演のキャスト一覧が公式HPで公開される。荒牧さんはいない。
メインビジュアルが公開される。荒牧さんはいない。
ライブビューイングの告知チラシが公開される。いない。
キャストが稽古中に撮った集合写真がTwitterに載る。いない。
ゲネプロの取材記事が公開される。いない。
観劇日、劇場に貼ってあるポスターを見る。いない。
物販列に並びながらブロマイド一覧を見る。いない。
どこにも彼がいない。いや、いないのは当たり前だ。キャスト変更があったんだから。
頭ではわかっているのに、公式から何かが公開されると毎度毎度「いない」と再確認させられて落ち込む。喪失感がものすごい。いないのだ。私が好きになった荒牧さんの仙蔵が。

そして、推しのいない舞台の幕が上がる。
もう癖になっているのか、無意識に仙蔵に目が行ってしまう。新しい仙蔵は常に姿勢を正し、ゆったりと余裕のある丁寧な動きで、後ろ髪をさらっと掬うあの仕草をしていて、「ああ、荒牧さんの仙蔵を見てくれたんだなぁ」と思うと嬉しかった。
でも、だったら、それにしたら物足りない。「荒牧さんの仙蔵」に完全に成りきれるわけがないし、それっぽいことをしても違和感は拭えない。……こんなの仙蔵じゃない。

その後しばらくして開催された忍ミュのコンサートはチケットを取れなかった。ニコ生配信もあったけど、そこまでして観る気にはなれなかった。だってそこに、彼はいない。

いつまでも忍ミュの仙蔵に荒牧さんを求めていてはならないと悟った私は、その後半年の間に、これからは本気出して荒牧さんを応援しようと決めた。Twitterやブログで忍ミュ以外での彼を知り、実際に別の舞台のイベントで知らないキャスト陣に囲まれた彼を見た。「仙蔵を演じる荒牧さん」じゃなく、「荒牧さん」を好きになった。
彼がそれまで忍ミュに出演していた時期にあたる1月と6月に、代わりに出演する薄ミュ。公演時間は忍ミュより1時間ほど長く、殺陣が多く、生死に関わる壮絶なストーリー、さらにメインキャスト陣はみんな華がある。
わざわざ忍ミュを卒業して別の舞台に出るからにはそれなりの理由があると思っていたので、薄ミュを知ると自分なりに納得できた。確かにこの選択は正解だ。荒牧さんが役者としてことさら得意とする、ますます磨いてゆくべき部分を養える環境だと思う。

荒牧さんの卒業が納得できたら、鐘ヶ江さんの仙蔵を受け入れるのは一瞬だった。

第6弾再演から半年後、現在公演期間中の第7弾初演は、仙蔵が主役的立ち位置にあたる脚本だった。
観た人ならわかると思うけど、7弾の仙蔵は扉にぶつかったり台詞を取られたり転んだり敵につっかかったりする。そのことで悩んだり悔しがったりする。更に文次郎に励まされ、「これからもそばにいてくれ。ありがとう」と言う。
この仙蔵は明らかに荒牧さんの仙蔵じゃない。荒牧さんの仙蔵は常に完璧であってこそだし、失敗してもそこまで落ち込まない。文次郎に励まされたとしてもツンとして、決してそばにいてとかありがとうとか素直に言葉には出せない。それに、闇に忍べの曲中のアクロバットも。
これは鐘ヶ江さんだからこそできる仙蔵だ。そう思った。
私にとっての「忍ミュの仙蔵」イコール荒牧さんの完璧な仙蔵で、それは変わらない。でもよく考えると、原作の忍たまの仙蔵はしめりけコンビのせいでキレたり失敗したり悔しがったり結構するし、そんなに完璧じゃない。
だから鐘ヶ江さんの仙蔵は、ちゃんと仙蔵だ。第6弾再演のような、荒牧さんっぽい「何か」ではない。鐘ヶ江さんなりのキャラ解釈に基づく、鐘ヶ江さんにしかできない仙蔵だ。
第7弾を観たら自然と、そういうふうに受け入れられた。

でも私は、もう二度と忍ミュの仙蔵を好きになることはないと思う。いや、忍ミュは全員好きなんだけど、仙蔵を「特に好き」とはもう思えない。私にとっての「忍ミュの仙蔵」は、荒牧さんの仙蔵ただ一人だ。これまでも、これからも。